重要判例解説(14);最高裁平成20年7月4日第二小法廷判決

1 事案の概要
 本件は,コンビニエンス・ストアのフランチャイズ・チェーンを運営するYとの間で加盟店基本契約(以下「本件基本契約」という。)を締結してコンビニエンス・ストアを経営するXらが,①Yに対し,本件基本契約等に基づき,YがXらに代わってした商品仕入代金の支払状況等,すなわち,具体的な支払金額や値引きの有無等につき報告を求める事案である。
Xらは,昭和57年7月,平成3年10月,それぞれYとの間で本件基本契約を締結し,コンビニエンス・ストアの経営を開始した。本件基本契約において,加盟店経営者(Xら)とYとはそれぞれ独立の事業者とされ,加盟店経営者は独自に商品の仕入れができるとされていたが,実際上,加盟店経営者はYの提供する発注システムを利用し,推薦仕入先から商品を仕入れていた。なお,本件発注システムは,①各加盟店経営者が各自のコンピュータからYに商品の発注データを送信し,Yはこれを集約・整理して推薦仕入先に送信する,②推薦仕入先は,商品を各加盟店経営者に配送した上で,Yに請求データを送信するというものであり,本件基本契約には,加盟店経営者が推薦仕入先から本件発注システムによって商品を仕入れた場合は,加盟店経営者に代わってYが商品の仕入代金を支払い,加盟店経営者とYとの間の決済はオープンアカウントによって行われる、③オープンアカウントとは、加盟店経営者とYとの間の貸借の内容・経過及び加盟店経営者の義務に属する負担を逐次記帳して明らかにし,一括して借方,貸方の各科目を差引計算していく継続的計算関係をいう、④本件発注システムによる仕入代金の支払に関するYから加盟店経営者への報告については何ら定められていなかった。
 第1審及び原審は,①本件基本契約は,加盟店経営者とYとの間の権利義務関係を包括的に定めるもので,その一部を取り出して,受任者の報告義務を定める民法645条の規定を適用することも相当ではないこと,本件基本契約に本件報告に係る明文の定めはないことから,YはXらに対し,本件報告をする義務を負わないものと解されるとして,XらのYに対する請求を棄却すべきものとした。

2 判旨
破棄差戻し。
「加盟店経営者が本件発注システムによって商品を仕入れる場合,仕入商品の売買契約は加盟店経営者と推薦仕入先との間に成立し,その代金の支払に関する事務を加盟店経営者がYに委託する」という法律関係にあるから,「本件委託は,準委任(民法656条)の性質を有する」。もっとも,Yは,仕入代金相当額の費用の前払(同法649条参照)を受けず,支出した費用について支出の日以降オープンアカウントによる決済の時までの利息の償還(同法650条参照)を請求しえず,仕入代金の支払について報酬請求権(商512条参照)を有しないなど,本件委託には通常の準委任とは異なる「本件特性」が存する。
 本件基本契約には,「本件発注システムによる仕入代金の支払に関するYから加盟店経営者への報告については何らの定めがない」が,「商品の仕入れは,加盟店の経営の根幹を成すもの」であるところ,「加盟店経営者は,Yとは独立の事業者であって,自らが支払義務を負う仕入先に対する代金の支払をYに委託しているのであるから,仕入代金の支払についてその具体的内容を知りたいと考えるのは当然のこと」である。また,Yは,「Yに集約された情報の範囲内で,本件資料等提供条項によって提供される資料等からは明らかにならない具体的な支払内容を加盟店経営者に報告すること」に大きな困難があるとも考えられない。そうすると,「本件発注システムによる仕入代金の支払に関するYから加盟店経営者への報告について何らの定めがないからといって,委託者である加盟店経営者から請求があった場合に,準委任の性質を有する本件委託について,民法の規定する受任者の報告義務(民法656条,645条)が認められない理由はなく,本件基本契約の合理的解釈としては,本件特性があるためにYは本件報告をする義務を負わないものと解されない限り,Yは本件報告をする義務を免れない」。

3 解説
「フランチャイズ」の意味内容は,法律等により一義的に定まっているわけではないが,日本フランチャイズチェーン協会による定義によると,「事業者(「フランチャイザー」と呼ぶ)が,他の事業者(「フランチャイジー」と呼ぶ)との間に契約を結び,自己の商標,サービスマーク,トレード・ネームその他の営業の象徴となる標識,および経営のノウハウを用いて,同一のイメージのもとに商品の販売その他の事業を行う権利を与え,一方,フランチャイジーは,その見返りとして一定の対価を支払い,事業に必要な資金を投下してフランチャイザーの指導および援助のもとに事業を行う両者の継続的関係」とされている。フランチャイズ契約とは,このようなフランチャイズ・システムをつくるための契約である。
本件で問題となったのは,フランチャイズ本部が推薦仕入先への支払金額や値引金額などについて加盟店経営者に報告義務を負うか,という点である。すなわち,本件発注システムによって商品を仕入れる場合,加盟店経営者が代金支払に関する事務を本部に委託するという関係が生じ,これらの委託関係は、民法の規定する準委任の性質を有するものと考えられるが,民法645条,656条に規定する受任者の報告義務は,特約により免除し得るものと解されていることから,本件基本契約の解釈としてYは本件報告をする義務を負うと解するべきか,それとも本件基本契約は当該義務を免除する趣旨を含むものと解するべきかが問題となる。
 この点,原審は,本件基本契約は,加盟店経営者とYとの間の権利義務関係を包括的に定めるもので,その一部を取り出して,受任者の報告義務を定める民法645条の規定を適用することは相当ではない旨を判示した。これは,典型契約制度(民法典に典型契約の規定を置くという制度)の意義・役割を消極視する見方であるが,最高裁は,民法645条が適用されると判示している。これは,典型契約制度の意義・役割を積極視する態度といえる。
 典型契約を消極視する立場は,個々の契約にはその契約にふさわしい規律を与えるべきであり,そのためには,当事者の意思が重要視され,法適用においてもそれぞれの契約にふさわしい規定を探し出すべきであるとする。そうすると,ある契約がどの典型契約に該当するかは,あまり意味がなく、当事者の意思の解釈が重要な意味を持つ。従来は、このように考えられていた。
しかし,ある契約にふさわしい規律を与えるといっても,何が「ふさわしい」規律であるかは容易に判断できず、これを考えるにあたっては,典型契約における処遇が,基準としての役割を果たすことから、最近では,典型契約を積極視する見方が有力になっている。典型契約だとしても、民法の条文には任意規定が多く存在し、特約で排除することは可能である。
 判例についてみると、最判昭和31年5月15日民集10巻5号496頁は,「いわゆる典型契約の混合する契約(混合契約)にいかなる法規を適用すベきかに関しては必ずしも議論がないわけではないけれども,その契約に或る典型契約の包含するを認め,これにその典型契約に関する規定を適用するに当つては,他に特段の事情の認むべきものがない限り右契約に関する規定全部の適用を肯定すべきであつて,その規定の一部の適用を認め他の一部の適用を否定しようとするためには,これを首肯せしめるに足る合理的根拠を明らかにすることを必要とするものといわなければならない」と判示する。実態はともかく,少なくとも本件基本契約上は,Xら加盟店経営者とYとはそれぞれ独立の事業者とされているのであって,Xらの要求は委任者として当然のものといえることや,YにおいてXらの当該要求に応えることにさほど困難があるとも思えないこと,本件基本契約の内容は,結局,Yの利益につながるものであることなどを考えると,本件において,上記判例のいうような合理的根拠が明らかにされたとするのは困難であろう。本判決は,このような観点から,YはXらに対してその求めに応じて本件報告をする義務を負うとしたものと思われる。
 もっとも,本件では,Yが本件委託について立替費用の前払も報酬も受けない等の特別な状況が存する。そこで,この本件の特殊状況により,民法の規定する受任者の報告義務の適用が排除されるかどうかが問題となる。この点について,本判決は,「加盟店経営者は,Yとは独立の事業者」であって,「仕入代金の支払についてその具体的内容を知りたいと考えるのは当然のこと」などと述べてYの報告義務を導いている。一方で、Xらからの送金をYが適正に処理することは正しい利益配分の前提条件であり,そのためには,Yが本件報告義務を負うことが不可欠である。オープンアカウントは,複雑な会計処理を本部が一挙に引き受け,本部からの資金援助も受けられる点で,加盟店経営者にとってメリットのあるシステムであるが,他方で,加盟店経営者が本部の具体的な支払内容を知ることができなければ,その支払の正当性を検証することは不可能である。その意味で,Yが本件報告義務を負うことが,本件フランチャイズ契約の性質に適った公正な法的処遇といえる。本件でYが民法の定める報告義務を負うのは,このような理由によるものと考える余地も十分にある。

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